高校生と見つける、私たちのSDGs探究ネット

カキ殻コンクリートで地域の課題解決と環境配慮の両立を目指す

岡山県立和気閑谷高等学校
写真
(左から)
橋本 智也 さん、黒明 和功 さん、仲田 蓮斗 さん、渡邊 総一郎 さん

探究テーマと、なぜそのテーマにしたのかを教えてください。

私たちの探究テーマは「カキ殻コンクリートの作成」です。もともとは「魚などの環境に配慮したダムを作りたい」という漠然としたテーマから始まり、実際にダム周辺を歩いて調査もしました。活動を進める中で、特にダムの水質改善という課題に注目するようになりました。
水質を改善できる素材を探す中で、和気町の近く、備前市日生町でカキの養殖が盛んな一方、年間約3000tものカキ殻の処理が課題になっていることを知りました。調べてみると、カキ殻には水質改善効果が期待できる炭酸カルシウムや海のミネラルが含まれていることが分かりました。このカキ殻をコンクリートに混ぜて、ダムの壁面材として活用すれば、地域の課題解決と私たちの目的を両立できるのではないか。そう考えたのが、このテーマに取り組むきっかけです。

写真

具体的にどのように活動を進めたのか教えてください。

私たちの探究は2年間にわたっています。1年生の中頃までは、環境に配慮したダムについて調査していました。1年生の後半からカキ殻に着目し、まずは日生漁協の方に直接お話を聞きに行きました。そこでカキ殻を譲っていただけることになり、同時に岡山理科大学工学部の中井賢治教授に相談し、コンクリートに関する専門的な知見を伺いました。
1年生の冬から、いよいよカキ殻コンクリートのサンプル作りを開始しました。コンクリートは通常、セメントと砂を混ぜたモルタルに、砂利などの「粗骨材」を加えて作ります。私たちはこの砂利の代わりにカキ殻を使うことを考えました。セメント120g、砂360gを基準とし、砂の量を減らしながらカキ殻の配合量を変えて、合計で約40個のサンプルを作成しました。

写真

そして1年生の春休みに、作成したサンプルを岡山理科大学に持ち込み、プレス機を使って圧縮強度を測定する実験を行いました。その結果、カキ殻を100g配合したサンプル(セメント120g、砂260g、カキ殻100g)が最も高い強度を示すことが分かりました。
2年生になってからは、この「カキ殻100g」という結果の再現性を確かめるため、同じ配合のサンプルをさらに複数作成しました。そして2年生の秋に再び強度測定を行い、得られたデータから「ワイブル解析」という専門的な統計分析を行って、実験結果の信頼度が高いことを確認しました。

活動の中で、うまくいかなかったことや大変だったことはありましたか。

一番大変だったのは、多くのサンプルを一つ一つ手作業で作ることでした。探究活動に使える授業時間は週に1回、1時間しかありません。そのため、放課後や春休みなどの授業外の時間にみんなで集まって作業を進める必要がありました。
コンクリートを作る際には、材料を混ぜて型に流し込むのですが、強度に影響する気泡を抜く作業が特に手間がかかりました。また、最初の頃は加える水の量を厳密に決めていなかったため、サンプルごとに出来栄えが異なり、正確なデータが取れないという問題も発生しました。同じ品質のものを作り続けることの難しさを痛感しました。

写真

その困難をどのように乗り越えたのでしょうか。

時間的な制約や作業の大変さは、メンバー4人が一丸となることで乗り越えました。誰か一人に任せるのではなく、「みんなで集まって一気に作ろう」と声を掛け合い、協力して取り組みました。大変ではありましたが、「ここまでやったからには最後までやり遂げて結果を出したい」という強い気持ちが、みんなのモチベーションになっていたと思います。
また、この活動が、元々私たちが目指していた「環境に配慮したダム作り」という当初の目的に繋がっているという実感も、活動を続ける上での大きな支えになりました。

活動を通して、どのような成長や学びがありましたか。

まず、思いついたアイデアを実際に行動に移し、形にすることの大変さと、そのためにどれだけの手間と時間がかかるかを身をもって学びました。そして、この大変な作業は一人では決してできなかったと思います。仲間と協力し、一丸となることで大きな目標を達成できるということを再確認でき、チームで動く力が成長したと感じています。
また、仮説を立て、実験で検証し、結果を分析して次のアクションを考えるという、科学的な探究のプロセスを実践できたことも大きな学びです。大学や地域の方々と連携しながらプロジェクトを進めていくという貴重な経験もできました。

写真

探究活動を進める上でのポイントは?

探究活動では、まずテーマを決めるのが大変だと思います。でも、一度テーマを決めたら、それを信じて貫いていくことが大切です。もちろん、途中で「この方向で合っているのかな?」と不安になることもあります。でも、うまくいかなくても、それは失敗ではありません。
トライアンドエラーを繰り返しながら、仮説を立てて検証していくこと自体が探究活動の醍醐味だと思います。自分たちが「これを探究したい」と思ったことを信じて、仲間と協力しながら進んでいけば、道は開けるはずです。

(取材日:2026年1月29日)