災害への強さと
ビジネス創造の両立

「閉じながら開く」
設計への挑戦

株式会社NTTファシリティーズ 一級建築士事務所
都市・建築設計部 建築設計部門 担当部長
木村 輝之 さん

「閉じながら開く」を建物で具現化

災害に強い土地で、いかなる時にも放送事業を継続できる体制を整備することを第一目的としながら、既存の放送局の枠に留まらないビジネス開発をしていく創造拠点の整備を行いたいということで、我々にお話をいただきました。「災害に強い建物」という言葉を聞くと、固いコンクリートで囲まれたような閉じた建物をイメージすると思いますが、ビジネス開発の創造拠点というコンセプトもありましたので、我々としては「閉じながら開く」ということを、社屋で具現化しようと設計をさせていただきました。

具体的には、放送機能を集約した建物については、現状世の中で最も安全な構造形式といわれている、基礎免震構造を軸にしようということを早々に決定しました。放送局としての信頼性をまず高めたうえで、ビジネス開発の創造拠点として、ステークホルダーの方々や地域の方々との繋がりをどのように感じられる空間とするかについて、もう一歩踏み込んだ設計を瀬戸内海放送様と議論しながら作り上げました。

設計手法としては、外周に大きなフレームを用いることで建物としての剛性を確保しながら、建物の中に入ると庭を中心に空間的な繋がりが感じやすいように内周には細柱を採用するということを、免震構造も使いながら実現しているというところが、大きなポイントかなと思います。
建物の中に関しても、スタジオなどどうしても閉じないといけない部分は閉じるのですが、間仕切りなどを極力設けずに大きな空間にしたいということをご要望いただきました。これまでと違うエンカウンターを生むような、創造性をかき立てるような空間にしたいということでしたので、「では、空間を緩やかに繋げていきましょう」とご提案しました。ただ、単に空間を繋げるだけでは居心地の良さには繋がりません。視線の抜けを立体的にずれながら重なるように設けることで建物全体がどこまでも緩やかに繫がり、社員や訪れた人全てがどこにいても連帯感を感じられる空間としながら、放送局に求められるセキュリティを担保しています。

非常時も平常時も人を大切に

設計・打合せのプロセスで最も印象的だったのは、「社員こそが大事だ」という話をいただいたことです。「どんなに高機能な建物ができても人がいなければ放送の継続はできないし、非常時でも平常時でも絶対的に人材が大事なのです」ということを、一番に仰っていました。今回の計画の中では、災害に強い建物であることも大切だったのですが、社員食堂の百菜家やマインドフルネスルームなど「社員の健康」にも、大きなテーマを持っておられました。電気や通信回線の引込二重化や非常用発電、汚水槽など、ハイスペックな設備も導入しているのですが、それだけではなく、「人を大切にする」という、定量評価の難しい定性的な要素を、非常に皆さん真剣に議論されていました。これは絶対に誇るべきところなのではないかと思っています。
当然、防災・災害については十分に配慮しながら設計しましたが、このように「社員や人を守り、大切にする」という気持ちを持って社屋ができています。この思いというのは一過性のものではなくて、社員の皆さんの心に残っていると思いますので、その思いをずっとつなげていただきたいと思っていますし、その想いは必ず地域にも派生していくと信じています。瀬戸内海放送様が地域とともに成長し、地域に根付きながら、社員や地域住民が主役となっていく、こういった放送局になっていただきたいなと私は思います。

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