いま必要な情報を集め、
生活者に届ける

KSB瀬戸内海放送 報道クリエイティブユニット(高松本社)
2020年入社
出身地:東京都
荻津 尚輝
日頃の訓練が何よりも大事
“大切な報道とは何か”を日々問い続ける
記者として、そしてアナウンサーとして
普段の仕事内容と、災害時どのように動くことになるか教えてください。
アナウンサー兼記者として働いています。災害発生時は、アナウンサーとしてニュース読みや中継のリポートをする可能性もあれば、記者として現場で取材をしたり、中継ディレクターを担ったりする可能性もあります。
いざというときのために、普段から備えていることは
記者としては、初動が一番大事ですので、警察・消防・行政などの災害に関わりそうな部署にはワンタッチで電話ができるよう、スマートフォンを設定しています。素早く取材ができるかどうかは、どれだけ早く情報が取れるかに関わってきますので。実際の取材では、被害が起きている場所に行くことになるので、被災されている人たちに対する配慮というものが絶対に欠かせません。だからこそ、災害に対する報道の姿勢というものはいつも考えるようにしていて、他の地域の災害報道も丁寧にチェックするようにしています。
アナウンサーとしては、災害が起こったときにテレビでしゃべること、例えば緊急地震速報や津波情報などの基本知識を、正しく理解して身に着けておく必要があります。その勉強と、いざそれらの情報が画面に映し出されたときに伝える優先順位、また読む声のスピードやトーンなどを意識して、自主練習をとにかくたくさん行います。

突然の緊急地震速報 生かされた訓練
荻津さんはニュースの生放送中に、緊急地震速報の対応を経験しましたね。
はい、2024年8月8日の夕方、スポーツニュースを読んでいるときのことでした。モニターの上の方に何かテロップが出ていることに気づき、その後イヤホンにマネジャーの伊藤さんから「緊急地震速報の対応をお願いします」という指示が入りました。そしてテロップに表示されている緊急地震速報の情報を読み始めるとほぼ同時に、もともと読んでいたニュースの映像からスタジオ(自分の顔)に映像が切り替わり、その間テロップの情報を繰り返し読み続けました。その後、高松港のライブカメラに映像が切り替わりました。高松市はあまり被害がなく、いつも通りの様子が映っていましたが、いつも通りということも含めて大事な情報だと思い、伝えました。そうしていると、震度情報が書かれている紙をスタッフから手渡されたので、その中から香川・岡山の情報を見つけて放送枠が終了するまでしゃべり続けました。
突然のことだったと思いますが、どのようなことを意識しましたか?
第一に、自分自身は絶対に焦らないことを心掛けました。自分が焦ってしまうと、スタッフやテレビを見ている人にも焦りが伝わるので、誰でも聞き取れるようにゆっくりしゃべりました。また、いま画面のどの部分を喋っているのかということを、丁寧に前置きしたうえでしゃべること、 あとは大事な情報を繰り返し伝えることを意識しました。「さっきも聞いた」と思われてもいいから、途中からテレビをつけた人でも状況がすぐ分かるように繰り返し伝えること、それから、「海岸などには近づかないでください」などの、注意喚起を丁寧に行うことを意識しました。
経験して感じたこと、学んだことはどんなことですか
日頃の訓練はやはり大事だということを再確認しました。災害時の対応マニュアルや想定原稿は持っていますが、いざというときにその紙を取り出す余裕はありませんでした。何も原稿を持っていない状態で、画面に表示された情報と、映っている映像を描写しながら数分間しゃべることになるので、本当に日頃の備えに限るなと思いました。
あと、これは報道スタッフにも共有したのですが、自分自身がもし冷静だったとしても、ほかのスタッフまで全員冷静でいるとは限らないので、何かあったときにサポートできるよう、自分の担当でなくとも、放送にかかわる業務は、全員が流れを理解していく必要があると感じました。
被災者として 報道機関の一員として
荻津さんは東京出身で、東日本大震災も経験されていますね。
私は当時、中学2年生でした。遊んでいた友人と解散し、帰りの電車に乗って発車を待っていたときに地震が起きました。友人ともう一度合流し、広い公園で身を寄せ合って時間を過ごし、帰宅するための電車は全くなかったので、歩いて友人の家まで行って一夜を過ごしました。交通網はすべて遮断されていました。香川・岡山は車社会ですよね。もし大きな災害が起きると、道路が寸断されたり、海に近いエリアは浸水したりして、全く車がつかえないという事態が発生すると、とても混乱するのではないかと思っています。
それらの経験も踏まえて、地域にどのような情報を届けていきたいですか。
香川・岡山は比較的災害が少ない地域ではありますが、それが故に、災害が起きる前にどこに逃げたらいいのかということやその手順などを、把握していない人もいるのではないかと思います。しかし、ハザードマップをみていても、危険な地域はたくさんありますし、災害が起こったら、どこかで必ず被害は出ます。報道機関の一員として、「自分は大丈夫」と思っている人たちにも、ちゃんと自分事として考えてもらえるような情報の発信者であり続けたいと思っています。
