植物の力で
人の心や人生を豊かにしたい
[造園]荻野景観設計株式会社 代表取締役 荻野寿也さん
“ご神木”のクスノキを中心とした造園
今回は、もともとこの土地にあったクスノキを残すということで、クスノキを中心とした造園になりました。建築中、足場に当たる枝を落とすなど多少は手を入れましたが、それも最小限で、きれいな形で残せてよかったと思います。クスノキは樹齢1,000年を超えるものもあるなど寿命が長く、それゆえに縁起がいい木とされています。日本各地の神社でもクスノキは大切にされ、最終的にはしめなわを付けたご神木になっていく。このクスノキもそういうものになっていってほしいと思っています。
水の流れで本社とのつながりを演出
高松本社の庭にも小川が流れているので、本社からmake SPACEに歩いてきたときになんとなくつながりを感じられるように、make SPACEの方にも水の流れを作りました。エントランスガーデンはこれから森に入っていくという演出、そしてメインの庭はクスノキを中心に水が流れる雑木林。建物の南側には視線を遮る意味も含めて常緑樹を密に配置しています。設計の前田さんとはもう15年以上の付き合いになりますが、本当に緑を使うのが上手い建築家。make SPACEも、どの部屋のどの窓から庭がどんなふうに見えるか、細かく考えられていると思います。とくにコンテンプレーションスペースは、各部屋の小窓を開けると緑が見えるし、木漏れ日や風も感じるし、水の音や木の葉擦れの音が聞こえたりもする。そういう自然から受ける刺激を、この小部屋で感じてもらいたいですね。
83種類の植物が作り出す四季折々の表情
make SPACEが完成したのが夏。この最初の暑い夏を乗り切ってちゃんと根を張ることができた植物たちは、これから先いろんな景色を見せてくれると思います。春は花も咲くし、ブルーベリーやレモンなど実のなる木もあります。全部で83種類の植物を入れているので、四季それぞれの変化を楽しんでほしいと思います。最初にクスノキのご神木の話をしましたが、有名な神社のご神木も、過去の誰かが残そうとしたから1,000年経った今も残っているんですよね。そういう意味で、今回のmake SPACEを建築するにあたってこのクスノキを残したという判断が素晴らしいと思います。もしかしたら1,000年後、このクスノキがご神木となってここが神社になっているかもしれませんよね。